「色を奏でる」 志村ふくみ・著。
染物・織物が気になるようになって数ヶ月。
知らないことだらけでちょっとしたサイトや本を読むだけでも
「ほほ~!」と感心することだらけです。
自分でも染めてみたいなぁと思ってみたり。
そんな中読み始めた「色を奏でる」。
目からウロコ、というか、染め・織りの上っ面しか知らないワタシには
(実際には上っ面すらわかってないんですが@)
衝撃的な事実(?)がたくさんで感動すら覚えます。
緑の草木はそこら中に生えているのに
色として染めようとすると単体では緑には染まらない。
思い描いた色が必ず出るわけではない。
季節によって草木の色は異なる。
花の開花前の色はそれはそれは匂い立つほどの美しさを持つ。
著者は「草木が抱いた色をいただいている」という表現をしている。
ああ、なるほど、と思った、単純に。
科学的に作り出した染料とはあきらかに異なる草木からの色は
決して混ざることはなく梅は梅の色であり桜は桜の色で、
梅と桜を混ぜ新しい色を作るのは梅と桜を汚すこと。
読めば読むほど自分がいかに人間の立場からしか
物事を考えていなかったか反省させられる。
あ、反省というか・・・・気付かされる。
きっと昔は誰しもがわかっていたことが
(頭でわかってるんじゃなく体で覚えている感じ?)
時代と共にいつの間にか忘れ去られてしまった大切なこと。
それが何だったのか、気付かされる。
文章の途中・途中に入ってくる著者の染めた糸や紡いだ裂(きれ)。
言葉では表現できない美しさ。
素朴なのに素朴という一言では足りない感じ。
何だろう、1本すっと何か真っ直ぐなモノが通ってる感じかな。
聞いたこともない植物の名前。
染め・織りにまつわる様々な物語。
文章表現も女性らしい美しさを持つこの著者が
大正13年生まれの84歳だと知り、さらに驚く。
しかも、現役で今も染めて織っているという。
染色を始めたのは離婚後の31歳からだという。
30歳を越えてからの人生転換。
現代とは違い女性が一人で生活しながらそういった特殊な仕事を
していくのはさぞかし大変だったろうと思う。
1990年には重要無形文化財保持者に認定されるまでになる。
毎日をうすらボンヤリと過ごしているワタシには
何とも刺激になるお話であります・・・・。
ワタシはまだまだ甘いです(*v.v)。
ほうきみたいにフサフサの毛(?)がついた草は
全てススキだと思ってたけど、そうじゃなかった。
「刈安(かりやす)」という草もあるそうで。
この雑草みたいなので染めると黄色になる。
「蘇芳(すおう)」「紫根(しこん)」聞いたこともない草木。
いったいどんな姿・形なんだろう。
本当に世の中には知らないことばかりで恥ずかしくなる。
1986年に書かれたこの本。
人生の大先輩の書かれたこの本には
日本人としての想いも静かだけど強くしたためられた一冊です。
草木を見る眼がちょっと変わります。